第7回埼玉県ミドル失語症者の会

相談、歓談、談笑、面談などを失った障害者、それが失語症者。笑うことはあっても、「談」はしないのです、というよりも出来ないからです。何とかしようと思うんだけれども、何度も何度もやってみても出来ないのです。

失語症者であるIさん。Iさんの奥さんはこんなことを言っていたそうです。「あなたは、語り始めたら、その私の時間はあげるからね。そのかわり文章を切るな!」と。

私は、同じ経験をしていたから、苦笑するしかありませんでした。つーか、笑ってしまいました。私の体験では、たとえば、妻が聞いていると、私が「同・じ・会・社・に・勤・め・た・友・達・が、転・勤・を、・・・」としゃべるのを急にやめると、妻の思っていることは、『地名を思い出しているのかな、それとも、友達が言った言葉を思い出しているのかな、それとも、終わり?・・・』。私は、納得して世間話をやめてしまったのです。その間、妻は、早く言ってほしいのに、中途半端でやめないでほしいと思っていたんではないでしょうか。

一般の家庭なら、《夫:「同じ会社に勤めた友達が、転勤をすることになってしまい、彼の奥さんは東京に残るって言い出したんだよ。」 妻:「転勤はどこへ?」 夫:「大阪」 妻:「誰なの?」 夫:「山田」 妻:「子供はいないの?」 夫:「いる。7歳。小学校のことを考えたら、奥さんは正しいのかもしれない」》っとなっていたんです。約3分で、会話が成り立ちます。

前述の文で、私の「納得して」という部分は、「小学校のことを考えたら、奥さんは正しいのかもしれない」っていうことを理解して、やめてしまったのです。言葉が遅い。対して、考えることは普通にできる。相容れない部分があって、むなしいのです。

「しゃべっていることをやめる」には、もうひとつあります。それは、動詞です。私は、今、障害者をしていますけど、一歩踏み出せば、社会人。友人や子供、会社の先輩、後輩、上司など、「言いまわし」が変わります。名詞や形容詞は、言えても動詞はどうすればいいのか悩んでしまします。たとえば、「○○する」は、友人は「○○しようぜ」。子供は「○○しよう」。先輩は「○○しましょう」。後輩は「○○する」。いろいろな立場によって変わるから動詞は難しいですね。上司を、友人と間違えて、「○○しようぜ」となってしまったら、仕方がない謝りましょう。ここでは、失語症者ですから、動詞を「やめる」はやめて、「談」をしましょうね(笑)

埼玉県ミドル失語症者の会
平成24年10月 会長 友井規幸