第38回埼玉県若い失語症者のつどい
~はじめの一歩〜

春は、入学や卒業、入社、異動など、いろいろな「転機」が訪れる季節です。でも、失語症は違います。脳卒中で倒れたり事故にあったりした事など、一瞬の事が原因です。なので、失語症には季節は無関係で、どん底に、というよりは奈落の底まで、突き落とされた感じがします。

私は、当時36歳で脳梗塞になり、「若い世代はいない。自分で切り開いていかなければ・・・」と本当に思っていました。そのあと悶々とし、ちょうど、春の市の広報誌で、有名な、遠藤先生(私は先生のことを知らなかったですが・・・)が、講演をするというので、某老人ホームまで行きました。それが楽しかった!!先生は講演と失語症ライブをして、終わった後には、若いSTや失語症者を混ぜてフリートーク。しかも、STだけを対象にはしないで、失語症者にも、家族にも、某老人ホームのヘルパーにも、全員に聞こえるように先生は話をしてくれました。

最後に、遠藤先生は、突然、「初代の埼玉県の若いつどいは、友井君。会長に任命する」。えぇー、ちょっと待ってくださいよ。会話も出来ていないのに・・・それに、埼玉県若いつどいもできていません・・・。でもこれは、あとで考えると「転機」だと、私は直感的にそう思ったはずです。

埼玉県の若いつどいは、もともとは失語症者のSさんのアイデアで、埼玉でも集まったら良いのにと思われたことがきっかけです。そんな訳で、急遽、立ち上げなければいけません。東京都の若いつどいを見、数回の運営委員会をし、なんとか約半年で、「埼玉県若い失語症者のつどい」が生まれました。もちろんSTのTさんとIさん、失語症者の運営委員会と家族などが、いうまでもなくご協力してくれました。

そこで、奈落の底から生き返って来た失語症者の「転機」。まずは、(1)直感力(2)決断力(3)行動力、それから、(4)変化対応力、これが一番重要です。失語症は会話することが出来ないから。私は、友人にメールやメモ、あるいは奇想天外な発案などで頼っていました。みんなも、家族や友人、係り付けのSTの先生などに頼っていいと思いますよ。

遠藤先生初め、STの先生方には、言語だけではなく、「生きる活力」、あるいは、「失語症者の転機」を与えられたのかなあと改めて思います。結果的に見ると、転機は春だと言うことです。私の場合にはね。


埼玉県若い失語症者のつどい〜はじめの一歩〜
平成24年4月 友井規幸